斬新な新規事業を生み出すには?──生成AIで生む、次の企画の形

新規事業の創出は、もはや一部のエース人材だけが挑む特権的なタスクではない。生成AIの進化により、「発想の出発点」は誰にでも開かれつつある。だが、いざ実行可能なレベルまで落とし込もうとすると、多くの人が壁にぶつかる。
生成AIを使って発想し、社内を“通す”企画へと昇華させる実践的なノウハウを新規事業のアイデア提案を多数行い、8割の採用実績があるunlock代表・津島越朗氏に取材した。
生成AIで“発想ゼロ”の人が追いつける時代に
生成AIで、採用されるアイデアを生み出したい——、そう考える人は多いはずだ。実際、企画が苦手な人にとって、生成AIは“発想の壁”を乗り越える強力なツールになる。
企画が苦手な人の場合、生成AIは新規事業の「発想段階」における“底上げ装置”として機能し、一定の水準まで追いつける可能性を広げてくれるのだ。「アイデアが出ないという人が、ゼロから発想できるようになったのは革命的です。たとえ無難な内容でも、最初の一歩をAIが提示してくれる。それだけで検討の土台ができます」(津島氏)
たとえAIの出力が凡庸に見えたとしても、それがきっかけになれば十分に意味がある。企画を考えることに苦手意識がある人ほど、最初の一手で立ち止まってしまう。ある程度の方向性が見えることで、発想から「磨き上げる工程」へと意識を切り替えられる。
では、すでに企画力がある人が、さらに一段階上のクオリティを目指すにはどうすればいいのか。ポイントは、生成AIに“網羅的に調べさせ、会話しながら発想を展開する”スタイルにある。今やプロンプトの工夫なしでも、生成AIは一定レベルの応答が可能な段階に達している。まずはAIと対話を重ね、情報収集とアイデア拡張のサイクルを回すことが重要だ。
具体的にまずは企画のテーマに関してChat-GPTの「Deep Research」機能を使って、既存情報を徹底的に収集と整理をする。
たとえば、「空き家対策の分野で新規事業を考えたい」と思ったとき、生成AIのDeep Research機能で「空き家に関する社会課題や、その領域のスタートアップをリサーチして」と依頼すれば、既存サービスや市場の動向を整理してくれる。それを踏まえてさらにアイデア展開を依頼し、さらに新しい視点が得られたら、また Deep Research機能で追加リサーチを……と往復することで、当初は想定していなかった切り口にたどり着く可能性が高まる。
「『他業界では当たり前なのに、自分の業界では全く実現できていない』というような、アイデアの“見落とし”に気づけるのがAIリサーチの真骨頂です。自分の頭だけでは到底たどり着けない観点が手に入ります」(津島氏)
企画は出せても“通らない”理由
こうして、今まで見たこともない素晴らしい企画を発想することができるようになるはずだ。しかし自分の会社では実現できない企画をいくらAIが生み出しても、それには何の価値もない。それが、たとえ大きなビジネスを生むとしてもである。
「“儲かりそうだから通る”というのは誤解です。その企業哲学やパーパス、求めるアイデアの条件に合っていなければ、企画はまず却下されます。生成AIが出したアイデアにセンスを加えるのは自分自身です」(津島氏)
生成AIを活用する際にも、問うべきなのは「どんな問いを立てるか」、そして「出力された答えの中から何を選ぶか」という判断力だ。特に後者には、企業文化や価値観といった“暗黙知”が深く関わってくる。つまり、AIのアウトプットに「その企業らしさ」をどう取り入れるかが、企画の質を左右する。
たとえば新規事業にドローンを使った画期的な企画を立てたとしよう。ある企業では「軍事転用リスクがあるからNG」、別の企業では「ドローンは成長領域だから積極投資すべき」と正反対の判断がされることも十分あり得る。同じアイデアでも、“誰にとって、なぜ今必要なのか”を語る文脈を完全に織り込めば、その企業にとって最高に画期的な新規事業アイデアが生み出せる。
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