【ROAD TO START UP】 イントレプレナーの挑戦 campass 北田綾さん[後編] 「独立するよりも、会社にメリットを もたらす事業に育てていきたい」

近年注目を集めている社内起業家=イントレプレナー。眠っていたレガシーが蘇ったり、企業風土を一変する可能性を秘めたイントレプレナーは、社員のモチベーションアップにもつながると言われています。秋葉原の高架下に話題のスポット「キャンプ練習場campass」を立ち上げたジェイアール東日本都市開発の北田綾さんもそんなイントレプレナーの1人。社内公募のアイデアが採用され、事業がスタート。だが、物事は想定通りには進まなかった……。
目先の収支より未来の可能性
北田綾さんは、現在はジェイアール東日本都市開発の経営企画部に所属、イントレプレナーとして「キャンプ練習場 campass」(https://www.jrtk.jp/campass/)の運営を行っている。
「会社に所属し、給料も会社員としていただいてはいますが、気持ち的にはcampassの責任者という部分が大きいと思います。チームで経理もすべて管理していますし、アルバイトスタッフの採用も私が決めています。会社からは予算もある程度任されていますし、収支を気にするよりはビジネスの可能性を広げることに注力してほしいと言われています。そこがイントレプレナーのいいところだと思いますが、でもやる側としては赤字でいいとはとても思えない。黒字化の責任を感じながら、常に試行錯誤しています」
2023年3月の正式オープンから1年あまりが過ぎた。現在のcampassはどのような状況なのだろうか?
「プラスもマイナスも想定外のことがありました。プラスになったは、企業の利用が多かったこと。新製品発表のイベント会場として使ってもらったり、社内研修の場所として活用してもらったり。雑誌の撮影で使ってもらったこともありました。こういった企業向けのスペース貸しみたいなことの引き合いは多いですし、今後も力を入れていきたいと思っています。マイナスは、真夏と冬季の想定した以上の利用数の落ち込みですね。冬季の高架下は想像以上に冷え込むんです。コタツキャンプや焚き火やストーブを使ったイベントなどが好評でしたので、次の冬はもっと力を入れてやっていきたいと思っています。なかなかお客様が入らない時期でもスタッフの人件費や地主であるJR東日本への借地料はかかりますから、そこをどう埋めていくかが今後の課題です」
働く母の背中を見せる
将来的なビジョンははっきりしている。
「秋葉原はメディアの注目もあるので、象徴的な場所として機能しつつ、いろいろな場所にcampassを作っていければと思っています。できれば都心部でもう1拠点。山手線か中央線でいい場所がないかを探しています。キャンプ練習場の需要はあると思うし、テストマーケティングの場としての可能性もあるので、この秋葉原で収益の軸を確立できたら、次へと広げていきたい。初期投資がそれほどかからないビジネスなので、フランチャイズ的な展開もあると思っています。ある程度のスペースがあれば、高架下でなくてもできますからね」
イントレプレナーとして走り続ける日々。会社員として働いていたころとは違う充実感があるという。
「やっぱり自分がやりたいことをやっているので、モチベーションは高い状態を維持しています。もちろん繁忙期は大変ですし、休みの日でも仕事のことがなかなか頭を離れない。でも私の場合は、家族の協力もあって楽しくやれています。私がメディアに出ることを子どもたちがすごく喜んでいるんです(笑)。働く母の背中を見せられているのかなと思っています」
収支にあらわれないメリットもある
いずれは会社から独立ということも考えているのだろうか?
「会社からはそこを目指してほしいといわれていますが、私としては今の状況がいいのかなと現時点では考えています。JR東日本グループの信頼で仕事ができている部分もありますし、ジェイアール東日本都市開発としてcampassのような取り組みもやっているというのが面白いのかなと。やりたいことを実現できるというのは、他の社員のモチベーションアップにも繋がると思いますし、実際、採用の場でcampassについて聞かれることも多いそうです。ジェイアール東日本都市開発という会社とまったく接点のなかった企業とタイアップできたり、メディアに取り上げてもらったり、会社に対して収支にあらわれないメリットをもたらせればと思います。また防災の観点から自治体と組んだイベントなども開催し、地域社会との繋がりも生まれています。私としては、自分がどうこうというよりは事業として発展していくことが理想ですから、会社にとってさまざまなメリットをもたらすビジネスに育て上げていきたいという思いのほうが強いです」
母ならではのアイデアから誕生した高架下のcampassは、キャンプ練習場としてだけでなく、さまざまな可能性を秘めている。5年後、10年後に各地で展開されていても不思議ではないと思った。
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