入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.10 「今年のスタートアップ業界MVPはタイミー・小川嶺代表」

早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんによる最新スタートアップ講座。今回は2024年を振り返ってもらい、もっともめざましい活躍をしたスタートアップ経営者を個人的MVPとして選出してもらいました。
現場主導の時代になる
今年のMVPを選ぶにあたり、入山先生が掲げたキーワードが“人手不足”だ。
「AIの進化はこれからもどんどん進んでいきます。AIによってなくなる仕事の筆頭と言えるのが企業の管理職です。いまホワイトカラーの人たちがやっている仕事のほとんどは、AIにとってかわられると言っても過言ではないと思っています。逆になくなることはないのは、現場の仕事。経営者と現場がいれば、企業活動が成立する時代になっていくのです。現場の仕事もいずれはロボットがやるようになるのかもしれませんが、少なくとも現段階では人間がやったほうが正確だし、コストも小さい。これから10年、20年の日本は現場主導の時代になっていくと思います」
時代のニーズをとらえた
そんな時代に登場し、すでに900万人を超える登録数を獲得しているのがスキマバイトアプリ「タイミー」だ。入山先生は、タイミーの創業者で代表でもある小川嶺さんを2024年のスタートアップ業界のMVPに選出した。
「タイミーは7月に東証グロース市場に上場しました。公開価格ベースでの時価総額は1379億円。2018年にサービスを開始していますからわずか6年でユニコーン企業になったわけです。小川君は27歳ですからね。まだまだ伸びしろも大きい。スタートアップ企業が爆発的な成長を遂げるには、時代とシンクロする必要があるのですが、タイミーがまさにそう。現場主導の時代であると同時に人手不足の時代。この両者のスキマを埋めるという時代のニーズに応えたのがタイミーだったわけです。すでに建築や輸送の現場はタイミーなしではまわらないとまで言われています。文句なしに2024年のMVP企業であり、起業家だと思います」
ピンチも乗り越えてくれるはず
タイミーに関しては、闇バイト問題の求人が行われていたのではないかということも話題となった。
「変化が起きるときは、どうしても負の部分も出てきてしまう。でもタイミーの利用者の99パーセントは満足しているはず。負の部分だけをクローズアップして叩くのはおかしいのではないでしょうか。闇バイト問題に限らず、タイミーの問題点はこれからいろいろ出てくるかもしれません。でもだからといっていまの日本にはタイミーが必要なのです。小川君を含めたタイミーの経営陣ならこのピンチもなんなく乗り越えると、僕は思っています」
入山先生の予測通りになるならば、タイミーのニーズはこれからもどんどん高まっていくだろう。このユニコーン企業がこれからどんなふうに進化していくのか。2025年も注目していきたい。
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