有楽町駅から徒歩30秒のスタートアップゲートウェイ   「Tokyo Innovation Base」の可能性

2024.07.10
#スタートアップニュース

目的地に到着して気がついた。ここはかつてファッションから家具まで扱う人気ブランドのメガストアがあった場所だ。その広々としたスペースがこの5月、スタートアップの発信地として生まれ変わっていた。「Tokyo Innovation Base」(TiB)があるのは、有楽町の駅前。都内はもちろん、地方からも海外からもアクセスしやすいこの場所に東京発イノベーションのハブが誕生した――。

5月にグランドオープンしたばかり

渋谷、六本木、虎ノ門、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアなど、東京には起業家や彼らを支援する大企業、VC、あるいはワーキングスペースなどが集まるいくつものスタートアップ・エコシステムが存在する。それぞれの地域が切磋琢磨しグローバル規模での成功を目指しているのはもちろん素晴らしいことなのだが、そのことが東京という都市の存在感を薄めてしまっているという側面もあった。そこでそういった東京の複数のスタートアップ・エコシステムのハブ、世界に対する顔として5月にグランドオープンしたのが有楽町の「Tokyo Innovation Base」(TiB)だ。

1Fは広々としたロビーになっていて、館内で開催されているさまざまな会議、イベントなどの案内板などが置かれている。ロビーの一部にはショップがあり、のぞいてみると雑貨や食品、農産物などさまざまな商品が並んでいた。ここで販売されているのは東京を対象とするスタートアップ企業の商品だという。

2階には大きなスタジオやワークスペースなどがあり、外国人も含めた若者たちがミーティングをしている様子も見られる。また案内に従って歩くと、3Dプリンターやレーザーカッター、金属加工機械、電子計測機器など数多くの機材が置かれたFABと呼ばれる実証フィールドがあり、白衣に身を包んだ若者たちが作業に没頭していた。

3階に上がると、おしゃれなカフェのような雰囲気。たくさんのテーブルが並び、ひとりでPCに向かう人もいれば、熱のこもったミーティングをしている人たちもいる。広くて、新しくて、スタイリッシュ。驚くべきは、この居心地のいいスペースが会員登録するだけでほぼ無料で使用可能ということだ。

TOKYOのスタートアップの入り口に

「TiBの大きな目的のひとつは、出会いを生み出すということ。ここは多くのスタートアップ支援の団体と協力関係にあり、投資家やアクセラレーターと出会うことができます。また実証スペースであるFABではエンジニアからレクチャーを受けることができる。もちろん同じようにスタートアップを目指す仲間とも出会うことができるでしょう。そういった多くの出会いから、新しい可能性が生み出される場所になればと思っています」

そう語るのは、東京都スタートアップ・国際金融都市戦略室の西川知伸さん。東京都としては、TiBが「TOKYOのスタートアップの入り口」になってほしいという狙いもあるという。

「海外の投資家から『東京は全体像が見えづらい』ということをよく言われます。スタートアップ・エコシステムが点在しているので、どこに行けば誰に会えるのかというのがわかりにくいと。だから、スタートアップを目指す起業家、支援する投資家、企業などが集い、ここに来れば彼らに出会えるという場所になっていくのも大きな目的になります。散らばっている点を、ひとつのかたまりとして見てもらう。有楽町から徒歩30秒、東京駅からも徒歩5分。この東京の真ん中にあるTiBが入り口、ハブになり、東京がスタートアップフレンドリーな都市だということを世界に知ってほしいと思っています」

さらなるアップデートも

東京都は、2022年「Global Innovation with STARTUPS」というスタートアップ戦略を掲げた。5年で「10億ドル以上の評価額のある東京発のユニコーン企業数を10倍」、「東京都の起業数を10倍」、「東京都との官民連携の数10倍」を目指すという目標の拠点となるのがこのTiBだ。

「TiBの立ち上げのために、約30の団体、企業、大学の方と議論を行いました。東京都が旗を振りつつ、官と民が力をあわせてゼロベースから作ってきました。今後もアップデートを続けていきたいですし、そのためにも多くの方に利用していただければと思っています」

TiBのワークスペースやサロンは、たくさんの人で賑わっていた。だが、広々としたスペースにはまだまだ余裕がある。スタートアップを目指すなら、まずここに足を運んでみてはどうだろうか。新たな出会いが、思わぬ未来を生み出すかもしれない。

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