入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.03 「スタートアップ適齢期は何歳?」

日本の起爆剤になるようなスタートアップの登場を誰もが待ち焦がれている。そんな人間が、企業が本当に現れるのか? 日本、世界のスタートアップ界隈ではいったい何が起きているのか? 早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんにスタートアップの最新事情を語ってもらった。
ビッグになるのは学生起業家
ビル・ゲイツ20歳、マーク・ザッカーバーグ20歳、スティーブ・ジョブズ21歳、孫正義22歳、藤田晋24歳、ジェフ・ベゾス30歳……こうして並べてみると、多くの経営者が30歳以下の若い時期にスタートアップしていることがわかる。スタートアップするならやはり若いほうがいいのだろうか?
「必ずしもそうとは言えません。アメリカのデータだとスタートアップが成功しやすい年齢は46歳。ある程度、経験値を積み、ビジネスについて理解しているほうが有利という点はあると思います。でも一方でAppleやFacebookのように学生時代に起業したほうがのちのちビッグになっているという事例もあります。若いから既成概念にとらわれない。それが強みになります。ズルい結論かもしれませんが(笑)、スタートアップに年齢は関係ない。どの年齢にも強みがあるし、どの年齢にもチャンスがあるといえます」
学生など若い年齢でのスタートアップには、「失敗コスト」が小さいという強みがあるという。
「年齢を重ね社会的な立場や家族など、背負うものが増えると、なかなか失敗できない状況になってしまいます。いつも話すことですが、スタートアップに失敗はつきもの。どんどんピボットして次のビジネスに向かう軽やかさが必要なのです。そういう意味で、なにも背負うものがない若者は失敗コストが小さい。学生ベンチャーなら、失敗してもそのあと卒業して就職すればいいわけですから。最近はあえて卒業せず、就活に有利な“新卒チケット”を持ったまま起業する学生もいると聞きます」
イントレプレナーの強みと弱み
会社員であっても“社内起業”でスタートアップする道がある。
「最近注目されている社内起業家=イントレプレナーは、会社員の地位を守りながら起業でき、かつ所属企業のリソースを使える、失敗コストが最も小さいスタートアップといえるでしょう。新規事業の開拓ができるだけでなく、社内の活性化にも繋がる、起業にとってもいい制度だと思います。ただもちろん弱みもある。大きな企業であるほど、上層部がリスクを取らないんです。せっかくイントレプレナーの制度を作るのであれば、失敗も財産になるというくらいの考え方で大胆なチャレンジを推進していってほしいんですけどね」
失敗が大切というのは理解できる。だが、あまりにも失敗を重ねると資金面での不安が出てくる。可能性のある若い人と、ビジネスの経験を積んだ人間ではどちらが資金調達しやすいのだろう。
「投資家は年齢を気にしないと思います。強いて言うならば、60歳以上の人だと、上場までのハードな経営を続けていくだけの体力があるかなと心配になるくらい(笑)。スタートアップでいちばん大事なのはビジネスアイデア。やはりビジネスとして成長が見込めるかどうかという点を厳しく見ます。そしてもうひとつは人間性。スタートアップ初期は苦労しかないと言ってもいい。それをやり抜いて、仲間を集めていけるかどうか。まわりから応援してもらえる人間かどうかをしっかり見ます。繰り返しになりますが、スタートアップに年齢は関係ない。アイデアと情熱があるなら、チャレンジしたほうがいいと思います」
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