スタートアップは“ガクチカ”の延長? 学生ビジネスコンテストが人気の理由。

2024.07.09
#スタートアップニュース

スタートアップは、決して“特別な人”だけがやるものではない。いま、大学生の間でもスタートアップ熱が上昇。ビジネスコンテストには多くの学生が集まり、喧々諤々議論を行っているという。90年代から学生ビジネスコンテストを行ってきたBusiness Contest KING の実行委員会の代表に最近の学生スタートアップ事情を訊いた。

学生に成長体験を届けたい

6月のある土曜日、西新宿にあるIT企業「SFIDA X」のオフィスは、多くの若者で賑わっていた。会議室やテーブルごとのグループに分かれ、それぞれが楽しそうに議論を交わしている。この日行われていたのは、「Amateur Business Contest 2024 Powered by SFIDA Xと名付けられたイベント。学生団体である「Business Contest KING 実行委員会」が主催するビジネスコンテストの“ルーキーリーグ”だ。

「今回は、大学1、2年生のビジネスコンテスト初心者向けのイベントになります。参加者をこちらでグループ分けして、テーマに沿ったビジネスプランを提出してもらい、事業計画書を作成。コンサルティング、ブラッシュアップを経て、プレゼンしてもらいます。私たちのメインコンテストである『Business Contest KING』の規模を小さくした感じで、2日間かけて予選、決勝を行い、優勝チームは賞金を獲得できます。このコンテストで出た企画が社会で実装されるわけではないですが、多くの学生に成長体験を届けたいという思いで活動をしています」

そう語るのは、Business Contest KING 実行委員会の代表を務める慶應義塾大学の大橋海斗さん。そもそもBusiness Contest KINGは、1996年に学生たちの手によってスタートした日本初のビジネスコンテスト。毎年夏に全国から約100名の学生が集まり、6日間の合宿型ビジネスコンテストを行っている。実行委員会にはいろいろな大学の学生が在籍。メインとなるこのコンテストのほかに今回の「Amateur Business Contest」のようなイベントを年に4〜5回開催している。

「独自のイベントだけでなく、企業とのコラボレーションでコンテストを行ったりもします。毎月のようになにかしらイベントがあるので、すごく忙しいです(笑)。文化祭がずっと続いている感じです」

起業が選択肢のひとつになってきた

近年、日本でも大学生や大学院生による起業が増えている。大学発のビジネスコンテストやベンチャーキャピタルも多く、自治体も若者に向けた起業支援を積極的に行っている。現在、学生である大橋さんもそういった“スタートアップ熱”を感じているのだろうか。

「学生の間でスタートアップへの関心が高まっているのは間違いないと思います。今回の『Amateur Business Contest』への参加希望者数も定員を上回っていました。学生主催のビジネスコンテストで定員を超えるというのは、かなり珍しいことだと思います。多くのメディアでもスタートアップを取り上げる機会が増えていますし、いろいろなビジネスコンテストが開催されるようになりました。東京都もスタートアップへの取り組みに力を入れていますよね。そういうさまざまな要素が組み合わさって、学生の間でもスタートアップ熱が生まれていると思います。大学を卒業したら就職するか、大学院に進むかしなかなかった選択肢に、起業というのが含まれるようになっているのではないでしょうか」

背景には大学生が抱えている「漠然とした危機感」があるのではないかと、大橋さんは語る。

「就職活動の時期が早まっていることもあり、大学1、2年生の段階からインターンだったりビジネスコンテストだったり、社会と繋がる活動をしておきたいという思いがあると思います。ちょっと極端な考え方かもしれませんが、就活の面接で必ず訊かれる“ガクチカ”(学生時代に力を入れたこと)のために、ビジネスコンテストに参加したり、スタートアップに関わったりしているという人もいると思います」

チャンスがあればチャレンジしたい

実行委員会にはかつて株式会社ユーグレナの出雲充社長も在籍していたという。スタートアップ熱の真ん中にいるともいえる大橋さん自身は起業を目指しているのだろうか?

「もともと起業に関心があったわけではないんですが、実行委員会にいると、実際に起業した方とかVCの方のお話を聞く機会が多いので、そういう選択肢もあるんだと思うようになりました。チャンスがあればチャレンジしてみたいですね。インターンをしてみると、やっぱり企業はトップダウンで動いていて、個人の意見が通りづらいんだなというのを実感します。それなら自分でやりたいことを、自分で作った組織で自由にやってみたい。失敗する可能性も高いと思いますよ。でも失敗したら、そのあと就活してもいい。そのくらいの気持ちではいます。起業のアイデアですか? ありますけど、それは内緒です(笑)」

「絶対に失敗できない。あとにはひけない」と必死の思いで起業するわけでなく、「失敗してもいい」と起業する。ガクチカの延長でいいではないか。楽しく、軽やかにスタートアップ。そういう学生がどんどん増えていけば、日本のスタートアップシーンも大きく変わっていくだろう。

新着記事