Study:大阪関西国際芸術祭「StARTs UPs」プロデューサー塩田悠人氏が語る、クリエイティブエコノミーの未来とイノベーションの鍵

Study:大阪関西国際芸術祭内で開催されるビジネスコンテスト「StARTs UPs」は、単なるビジネスコンテストの枠を超え、クリエイティブ産業の新たな可能性を切り拓く 取り組みとして注目されています。今回、同プログラムのプロデューサーである塩田悠人氏 に、エンタメとビジネスがどう交わりイノベーションを生むのか、そして7月23日に開催されるファイナルピッチの見どころについてお話を伺いました。
クリエイティブエコノミーは社会課題を解決しうる1つの産業になる
「今回の大阪国際芸術祭はテーマに“ソーシャルインパクト”を掲げており、社会課題解決というものに根差したアートを展示している点が特徴です。そのような前提の中で、クリエイティブエコノミー(※1)というジャンルが社会課題を横断的に解決しうる1つの産業になるのではないかと考えています。どんな社会課題であっても、エンタメやアートのように心を揺さぶられる切り口がなければ、持続的な解決には繋がりにくいからです。
そのため持続的な解決を意識し、芸術祭というイベントが、その場限りの注目で終わるのではなく、創造性や技術を起点とした新たな産業や継続的な雇用を生み出すイノベーション装置としての役割を担うために「StARTs UPs」というビジネスコンテストを行っています。」
※1クリエイティブエコノミー:アート、デザイン、音楽、ファッション、ゲーム、広告、観光、まちづくり、建築、漫画、アニメ、エンターテインメント、食など
プログラムが切り拓くクリエイティブ産業の未来
-「StARTs UPs」を運営する中で多くの企業からこのビジネスコンテストに対するポジティブな反応があったという。
「従来のビジネスコンテストやアクセラレーターでは、テック系の企業が注目されがちで、エンターテインメントやコンテンツ制作、アート関連事業に特化したクリエイティブ企業は、応募しづらい、あるいは採用されにくいという課題がありました。彼らと話してみると“まだビジネスに昇華し切れていない”“ジャンルが違う”と感じる心理的ハードルがあったり、実際にエントリーしてもなかなか採用されないという声が多く聞かれました。また“まだ見えるものが作れていない”という状況の企業も少なくありませんでした。今回のプログラムは、まさにそうしたクリエイティブシーンの企業に“光を当てる”こと、そして”私たちも応募していいんだ”という箱ができたことに対して、非常に嬉しいという声を多数いただいています。」
-また、応募している企業も他のビジネスコンテストとは違いユニーク。
「国内外問わず、非常に多様な企業様にご応募を頂きました。特に私が驚いたのは、伝統産業の3代目、4代目の方々に多くエントリー頂いたことです。例えば、ファイナリストの株式会社ACTA PLUS(アクタプラス)は、廃棄物処理業の3代目の方が、ゴミをアートに変換して販売するという取り組みをされています。他にも、伝統工芸の後継者や、着物の管理・レンタルを手掛けている企業の方など、需要が少なくなってきている既存のプロダクトを別のプロダクトに作り替えて、自社の変革やアート・エンタメシーンへの展開を模索している方々が多くいらっしゃいました。」
-通常のビジネスコンテストとは違い、クリエイティブエコノミー特化型ならではの「機会」と「支援」を求めて約100社の応募があったという。
「通常のビジネスコンテストではVC(ベンチャーキャピタル)の方々がメンターに並ぶことが多いですが、今回はクリエイティブシーンの現場で実際に市場を創ってきた方々をCREATIVE ECONOMY MENTORSとして多く招いており、ファイナリストには約4回のメンタリング機会が提供され、各企業が自分たちの課題や目指す方向に合わせて、最適な指導を受けられるようにするため、20人のメンターの中から希望するメンターを自身で選べます。」
エンタメスタートアップの成功の鍵
-エンタメスタートアップを支援する中でスタートアップの事業推進上の課題も見えてきたという。
「私たちプロデューサーとして、参加企業に最も伝えたいのは、やはり“お客さんがめちゃくちゃ楽しかった” “笑顔になっている”といった実証実験の場をどれだけ早く作れるか、ということです。スタートアップ企業がVCの目のみを見て、企画書や事業計画に長い時間注力し、顧客目線での検証が遅れているという課題も少なくありません。エンタメである以上、最終的にお客さんが感動してくれるかどうかが全てです。賞を取るためのアイデアやVCの意見ばかりに寄り過ぎて、肝心のお客さんが見えなくなってしまう状態は避けるべきです。これは、創業間もない企業にも同じことが言えると思い、StARTsUPsに加え、シリーズA以前の企業を対象とした連携企画Blooming UPsをさくらインターネット様と共催しております。」
-また、エンタメスタートアップが今後ビジネスとして成功していく上での重要な観点についても発見があった。
「審査員の一人である麻生要一さんも言葉にしていましたが、スタートアップがスケールしていく上での重要な突破口は“大企業との協業”です。日本には大企業が多く、彼らはスタートアップとの連携を求めています。大企業との連携を模索することが、一気に伸びるチャンスとなります。もう一つは“海外への早期展開”です。韓国のスタートアップは国内市場の小ささから、サムスンなどの大企業が支援の仕組みを設けて積極的に海外進出を図っており、英語教育にも力を入れています。日本のスタートアップも、国際特許取得後に海外展開する事例があり、有効な戦略だと考えられます。」
ファイナルピッチの見どころ
「ファイナルピッチの最大の見どころは、他のビジネスコンテストとは異なり、発表されるプロダクトの多くが「すぐに体験できる」ものである点です。本プログラムのファイナリストに採択されている企業でいうと、ドローンショーを手がける企業(株式会社レッドクリフ)ならその日の夜に万博会場でドローンが上がっているのを見られますし、バーチャル試着サービス(株式会社Sally127)ならスマホブラウザですぐに試せます。自由視点の映像配信システム(AMATELUS株式会社)もHPからすぐに体験できます。企業が開発するニューロミュージックもすぐに聞くことができます(VIE株式会社)。XRプラットフォームもアプリを入れればその場で楽しめます(株式会社STYLY)。グローバルアートコマースプラットフォームではその場で購入もできます(株式会社CLIMBERS)。笑いの感情を共有するシステム(株式会社lollol)など、開発中のものもありますが、開発されればすぐに体験できるようになるでしょう。観客や聴衆が“お客さん”としてすぐに楽しめる、それがクリエイティブエコノミーのピッチの醍醐味だと考えています。」
ピッチを見に来る参加者にとっても、世界中のアーティストやアートコレクターが集うため、通常のビジネスコンテストとはまた違った雰囲気を楽しめることだろう。
ファイナルピッチは7/23(水) 大阪中之島にある大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開催される。10年先のエンタメの未来を感じることができる貴重な機会、ぜひ会場でクリエイティブエコノミーの熱狂を体感してみてほしい。
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【チケットのご案内】
チケット | Study:大阪関西国際芸術祭 2025
https://osaka-kansai.art/pages/ticket
「アートフェアチケット」をお持ちの方は、StARTsUPsのイベントへもご来場いただけます。
※会場の都合により、ご来場人数を制限させていただく場合がございます。
塩田悠人 / プロデューサー
1994年生まれ。大阪大学大学院生命機能研究科、京都芸術大学大学院美術研究科修了。南米アルゼンチンで育った経験から、文化芸術が息づく社会づくりを探求する。大学在学中に2025年大阪・関西万博の誘致活動を市民代表として牽引。その後、広告代理店でXR/web3事業に従事したのち、クレー株式会社を創業。万博の催事企画などを推進。現在は国際芸術祭主催のビジネスコンテスト「StARTsUPs」などをプロデュース。世界経済フォーラムGlobal Shapersに選出。
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