【ROAD TO START UP】 イントレプレナーの挑戦 campass 北田綾さん[前編] 「自分のアイデアに自信があったから 同じ企画を2回提出しました」

近年注目を集めているのが社内起業家=イントレプレナー。眠っていたレガシーが蘇ったり、企業風土を一変する可能性を秘めたイントレプレナーは、社員のモチベーションアップにもつながると言われています。秋葉原の高架下に話題のスポット「キャンプ練習場campass」を立ち上げたジェイアール東日本都市開発の北田綾さんもそんなイントレプレナーの1人。彼女の提案には3児の母ならではの思いとアイデアが詰まっていた。
キャンプの基本を学べる“練習場”
秋葉原駅から線路沿いに御徒町駅方面に5分ほど歩く。ちょうどインバウンドのにぎわいを通り過ぎたあたりの高架下に「キャンプ練習場 campass」(https://www.jrtk.jp/campass/)の小さなログハウスが見えた。
「敷地は約1500平方メートル。最大14張りのテントを設営できます。現在は、デイキャンププラン・宿泊プラン(金曜・土曜のみ)・BBQプランで運営しています。(火曜・水曜定休)メインは、キャンプ初心者のお客様。テントやBBQの道具が揃っていますし、レクチャーも行っているので、本格的なキャンプに行く前の練習にいらっしゃる初心者の方が多いです。あとは、新しく購入したテントや道具を試す中級者の方も来ますね。宿泊は金曜日と土曜日だけですが、ほとんどのお客様がお酒を楽しまれてからテントに入るので、よく眠れるそうです。ただ始発の電車も早いので、その音で目が覚めたということはよく聞きます(笑)」
そう語るのは、「キャンプ練習場 campass」を運営しているジェイアール東日本都市開発の北田綾さん。北田さんは、社内の新規事業開発のコンテストに応募し、社内起業、いわゆるイントレプレナーの形で2023年にこのcampassを立ち上げた。
30代のうちに新しいチャレンジしたい
「ジェイアール東日本都市開発は、JR東日本グループの不動産部門の会社で、駅構内のショッピングエリアや高架下の管理、開発を行っています。私ももともとecute赤羽など駅隣接ショッピングセンターの開発を担当していたのですが、3回出産、産休と育休を繰り返しているうちに、会社がもっと若い女性が働きやすい環境になるようにと、希望して総務部に異動しました」
ジェイアール東日本都市開発の創業30周年の記念として新規事業公募のコンテストが行われたのは、2019年。
「昔から新しいことを考えるのが好きなんです。年齢も30代後半になり、仕事や社内での立ちまわり方もおぼえてきた。自分の好きなように仕事ができるようになってきたけど、このままでいいのかなという気持ちもあったんです。これからのキャリアを考えたときに新しいことにチャレンジしたほうがいいんじゃないかって。なんとなくですけど、40歳を過ぎてからより、今やったほうがいいような気がして、それくらいの軽い気持ちで新規事業のアイデアを出すことにしました」
北田さんが提案したのは「campass」の原型となる「高架下を利用したキャンプ場」だった。
「長男が少年野球のチームに入って、週末は夫と2人で野球漬けになったんです。残された私と2人の下の子どもの3人でキャンプとかやりたかったんですが、自分ひとりで長距離運転も大変だし、テントを張ったり、火おこししたりするのも難しい。そういう経験から、電車で行ける都会で気軽にキャンプの練習できる場所があればと思ったんです。そうやって考えたら、自分の会社で扱っている高架下なら雨が降っても大丈夫だし、キャンプの練習場所として最高だなと。社内であった新規事業のためのワークショップでも自分の原体験を掘り起こしてペルソナを深堀りしていくのが大切だということを教わっていたので、『都会の高架下のキャンプ場』の企画書を作って提案しました」
2回目のコンテストで採用に
第1回のコンテストは残念ながら不採用。それでも北田さんは諦めることなく、2年後の2021年に行われた第2回でもほぼ同じ内容の企画書を提出した。
「提案内容はほぼ同じですが、若い女性のニーズを示すアンケートを補足しました。さらに2回目はタイミングがよかった。ちょうどコロナ禍があり、キャンプブームが注目されることになった。それもあって審査を通り、グループ内での実証実験をするところまで行きました。そしてこの実証実験を経て、キャンプ場をキャンプ練習場に変更しました。私としては、この場所が成長を実感できる場所になってほしかった。キャンプ練習場といったほうが私と同じような思いをしている人に届くのではないかと思ったんです」
正式にGOサインが出た「キャンプ練習場 campass」は、ここから事業化に向けて動き出す。「軽い気持ちで」事業プランを提案した北田さんは、その責任を徐々に感じるようになっていったという。
「正式オープンの半年前、2022年8月に一般のお客様を呼んで実証実験したんです。そのときメディアの方にもたくさん来ていただいて、『これはあとに引けなくなったな』と思いました(笑)」
campass は2023年3月に正式オープン。しかし順風満帆とはいえないスタートが北田さんを待っていた。[以下後編]
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