スタートアップ出身キャピタリストが語る「いま、魅力を感じる “分野と人物”とは」

目の前にある“種”は、芽がでるかもわからないし、花や実をつけるまで成長するかもわからない。そんな中でも投資家はどんな基準でその種を見極め、どんなことを考えて出資をするのだろうか? シード〜アーリーラウンドの会社を担当することが多いというユナイテッド株式会社のキャピタリスト、八重樫郁哉さんに出資するために重視するポイントを訊いた。
長年にわたって数々のスタートアップ企業に投資を行ってきたユナイテッド株式会社。現在、同社の投資事業本部でキャピタリストチームマネージャーである八重樫郁哉さんは、大学生のころから「スタートアップ畑で育ってきた」という。
「大学生のときにスタートアップの立ち上げに参加しました。そこでセールス、CS、マーケティングから採用までビジネスサイド全般を担当しました。その後、独立系VCで大企業向けの新規事業開発の経験を経て、ユナイテッドに入社しました。ユナイテッドは事業会社として自己資金からの純投資が特徴で、業種やフェーズ、事業ステージを問わず出資をするというスタイルをとっています。現在はチームマネージャーとしてメンバー育成をしながら、私自身もキャピタリストとして活動しています。私個人としてはこれまでの経験からスタートアップの創業時の肌感覚、現場感のようなものを活かして投資先に貢献していきたいと思っています。」
八重樫さんは、現在投資先40社ほどを担当。さらに月30社程度の面談も行っているという。スタートアップがVCに出資を求める際、VCはどんなところを見ているのだろうか?
「事業内容に関わらず初めての資金調達のご相談をいただくときに共通して起業家と議論することは、やれることはやり切っているか、という点です。目の前にある課題に対して、お金をあまりかけなくてもできること、例えばユーザーヒヤリングやリサーチなど、検証できる事業仮説はぜひやりきったと自信をもっていてほしいですね。事前調査として競合にはどんな商品、サービスがあって、それがどのくらいの売上規模なのかなど、事業の検証を真剣にしていれば答えられるはずの質問に答えられない場合ですと、その起業家を信じて出資することは難しくなりますね。」
逆に興味を惹かれるのはどんな人物なのだろう。
「BtoB、BtoCの事業に共通して、現在過去問わず事業領域の当事者の経験を有していて、それに立脚した極めて高い事業解像度を持っている方に魅力を感じます。BtoBにおいては、当事者として圧倒的な顧客や顧客を取り巻く環境について深い理解を有しているからこそ、カスタマーに対する解像度が高い。BtoCの分野では、その領域に熱狂しているが故にユーザーに対するインサイトを捉えることができ、この力こそがヒットに繋がります。」
八重樫さんは、担当するスタートアップは、「toBが7割、toCが3割」。さまざまな業種があるという。現在どんな業種、業界に興味を持っているのだろうか。
「国内の人口動態の変化に紐づく課題を解決していくスタートアップには積極的に出資していきたいと考えています。具体的には、少子高齢化による介護問題、人手不足が深刻化しているレガシー産業のDXなどに注目しており、実際に投資実行させていただいています。直近では、AI活用で業務改革された居宅介護事業所を運営するスタートアップやAIを活用した製造業の現場DXソリューションを開発するスタートアップに出資しています。」
八重樫さんは、エンタメ業界にも積極的に出資を考えているという。
「エンタメは、多様な領域に出資しているのですが、比較的多いのはIPコンテンツ領域のスタートアップです。2.5次元のIPプロデュースを手掛ける企業、電子版の小説・ライトノベル出版業を運営する会社、AITuberの事務所を手掛ける企業など、テーマは様々ですが、経営チームないし所属するクリエイターが並々ならぬ熱量を持ってコンテンツを作り込んでいる会社には非常に魅力を感じます。その領域が好きでたまらない、というチームがファンに深く刺さるコンテンツを作り込んでいけると考えているので、投資判断では最も重視しています。」
八重樫さんは、出資を決める際「その事業に自分が起業家と同じ目線まで理解を深めて議論できるか、起業家と信頼し合える関係性が築けるかを大切にしている」とのこと。自分の事業に寄り添ってくれる投資家に出会えるかどうかは、スタートアップが成功する大きな鍵になるだろう。
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