入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.14 「日本のディープテックスタートアップの課題」
早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんによる最新スタートアップ講座。ここ数年、スタートアップ界隈のキーワードとなっているディープテック。成功したときのリターンは大きいけど、資金も時間も膨大にかかるこの分野は、これからの日本の“勝ち筋”になる可能性も。大きく成長するためにどんな課題があるのだろうか?
専門的知識を持つ“目利き”の育成
ロボット、宇宙、医療、エネルギー、バイオテクノロジーなど、世界的な問題を解決に導くとされるディープテック分野。しかしその研究・開発にはヒト・モノ・カネそして時間がかかる。
「ディープテックは投資を回収するまでに時間がかかる。だから投資する側もどうしても二の足を踏むというのは、日本に限らない問題です。それでも日本の未来を考えると、このディープテックの分野を伸ばしていくしかない。そのためには、研究・開発以外の人材を育てていかなければならないんです」
ディープテックにかかわる研究・開発以外の人材とは?
「アメリカでディープテックにお金が集まるのは、VCにディープテックを理解できる人間がいるからなんです。アメリカのVCには化学や工学、バイオなどの博士号を持ち、専門的知識を理解できる人材がいるんです。知識があるから可能性も見える。いわゆる“目利き”が存在するわけです。日本にはこのディープテック分野の目利きが決定的に少ない。高い技術がありながらもそれとビジネスを結びつける人間がいないから、その技術を世に出すことができずにいる。この間をつなぐ人材の育成が日本のディープテックを成功に導く大きなカギになると思います」
ディープテックを大企業が育てる
入山先生は、この技術とビジネスをつなぐ役割を大企業が担えばいいのではないかと考えているそう。
「高い技術を持つスタートアップを大企業がどんどんM&Aして、ビジネス化の役割を担えばいい。日本の大企業はいまだに“自前主義”で、スタートアップより自分たちのほうが高い技術を持っていると思っているところも多いんですが、やっぱり世界を変えるような尖ったアイデア、テクノロジーはスタートアップからしか生まれない。だから大企業がディープテックのスタートアップを研究機関として買収して、社内で育ててビジネス化していくのが日本に向いていると思います。かつて日本の多くの大企業は社内に研究部門を作り、そこで10年後、20年後のための技術開発をしていた。でもいわゆる“失われた30年”で直近の利益、売上に繋がらない部門はどんどん削減されていったわけです。だからその部門をアウトソーシングする。そうすることでスタートアップは経営の心配をせずに研究に没頭できますし、大企業側も未来のビジネスの種を手に入れることができる。社内の研究開発の担当者が“目利き”になればいいんですから、win winの関係を築けるのではないかと思います」
スタートアップを買収し、成功に導くには、社内のコンセンサスを得るためのリーダーシップが必要だ。
「そこが実はいちばんの課題だったりしますよね。日本の大企業ってイノベーティブな人が社長になることが少ない。だいたい生え抜きの現場あがりだったりするわけで(笑)。でもこれだけグローバル化し、時代の流れが加速しているなかで過去の成功には意味がない。前にも言いましたけど、スタートアップをM&Aしてそのスタートアップの社長を経営陣に引き込んで社内改革をするくらいの大胆さがないと、いくら大企業といってもこれからの時代は生き残れないと思いますよ」
確かに最近凋落が話題となる企業は、確かに“現場あがり”がトップに立っていることが多い。日本の未来、ディープテックの未来のためにも昭和脳、平成脳の経営者には後進に道を譲っていただいたほうがいいのかもしれない。
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