入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.11 「ピポットする前に考えるべきこと」

早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんによる最新スタートアップ講座。ひとつの方向がうまくいかなかった場合、ピボットするというのがスタートアップの定石。でもそんなに簡単に“初志”を諦めていいものなのか? 入山先生がピボットの功罪について語った。
投資家やVCが絶対ではない
方向転換を意味するピボットは、スタートアップの成功の鍵のように語られることが多い。市場も消費者もハイスピードで移ろう現代社会において、それは必要なことのようにも思えるのだが……。
「うまくいっていないアントレプレナーは、ピボットを履き違えている場合が往々にして見られます。ちょっとでも否定的な意見やデータがあると、当初の理想からどんどん離れたものにピボットしていく。多くの場合、この否定的な意見を言っているのは投資家やVCです。でも考えてみてください。投資家やVCの意見が絶対的に正しければ、世の中のスタートアップは全部成功しているわけです。これはよく知られた話ですが、ある有名なVCは、初期のGoogleへの投資を断っています。FacebookやTESLAも何度も投資を断られている。もしこれらの企業がそこでピボットをしていたら、いまの世界のビジネス地図は別なものになっていたでしょう。特にこれまで世の中にない、まったく新しいアイデアの場合、受け入れてもらうのは簡単ではない。自分が考えたビジネスに自信があるのなら、安易なピボットはむしろ成功を遠ざけると言っていいでしょう」
プレゼンテーションを見直してみる
入山先生は、ピボットをする前に考えるべきことがあると語る。
「投資家やVCに投資を断られるのは、アイデアそのものではなく、プレゼンテーションに問題がある場合もあります。特に経験の浅い若手のアントレプレナーの場合、自分自身や自身の会社を主語にして物事を考え、伝えてしまいます。でも投資する側の興味のポイントは、この人間、会社は自分が預けた金をどこまで増やす可能性があるのかということ。極端にいえば、アイデアがイマイチだと思っても、プレゼンテーションをしている人間に成長の可能性を感じれば、投資を行う。その場合に見るのは、その人の人間性。どれだけ熱意を持って眼の前にある事業に打ち込めるか、仲間を集め、その仲間とともに諦めずに事業を進めることができるか。ピボットを繰り返していると、その程度の情熱だと思われかねません。本当にやりたいことがあるなら簡単に諦めず、まずはプレゼンテーションを見直してみるのもいいかもしれません」
“pivot”の本来の意味は回転軸。軸がブレブレのまま、人の意見に振り回されていても成功への道筋は見えてこないだろう。
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