【前編】【Review 2024】「2024年を象徴するキーワードは……」 ReGACY Innovation Group 成瀬功一代表取締役社長

動き続け、変化、進化し続けるスタートアップ業界。走り続けることはもちろん大事だが、一度振り返ることで、見えてくる道もある。2024年はどんな1年だったのだろう? イノベーション、スタートアップ業界を支え、多くの企業の未来を創造してきたReGACY Innovation Group 成瀬功一代表取締役社長にこの1年を総括してもらった。
スタートアップの構造転換の兆し
今年は、数年前の「メタバース・Web3」や昨年の「生成AI」のように、一部で先行的な取り組みが始まり、それが社会的に一般化したような新しいキーワードは特に見当たらなかったように思います。ただし、生成AIの実用が広がったインパクトは非常に大きく、スタートアップ業界だけでなくあらゆる産業で構造転換が起きる兆しが顕在化した年だったと言えます。
例えば、これまでスタートアップ業界の主軸であったSaaSモデルに対する終焉論や、インターフェース不要論などが、単なるコンセプトや概念ではなく、実際のSaaS開発方針の転換や新たな開発テーマの形成という具体的な形で事業開発の現場に影響を与え始めています。また、実際の開発でAIを活用する中で、日に日にAIでできることが急速に進化しており、構造改革の始まりを感じさせる年となりました。
これから起業を考えている方にとっては、自身の対象市場や業界の成長戦略を考える上で、必ず考慮すべき変化となっています。UXやインターフェース革新を主軸としたシンプルなソフトウェアプロダクトの資金調達は難しくなる一方で、研究開発や産業知見、リアルアセットを統合したビジネスモデルの価値は相対的に高まると思われます。ただし、そのようなビジネスモデルでも、生成AIを前提とした設計が不可欠となる印象です。
産業変革の時代へ
2024年が過渡期と考えられる背景にはもうひとつ要因があります。それは、toC向けの生活アプリや、toBでもHR・会計・法務といった全業界共通のホリゾンタルサービスが引き続き活況な一方で、各産業に特化したバーティカルなサービスがさらに広がる可能性が「身近に」見えてきたことです。
この動き自体はグローバルのスタートアップ投資トレンドとして目新しいものではありませんが、その背景として、産業プレイヤーである企業や自治体側の変化が加速していることが挙げられます。
産業特化プロダクトのユーザーは、工場や現場で専門的かつ業界最適化された業務を行う人々です。そのため、長い年月をかけてアナログな仕組みが浸透してきた現場では、デジタルやIoTによる業務変革が簡単には受け入れられず、それを売りたいスタートアップも拡大が困難で撤退するケースが多く見られました。
しかし、今年はこれまで以上に実務レベルでの変化の兆しが見えた年だったと思います。
例えば、ここ10年で日本の大手企業がこぞってCVCを設立し、先端テクノロジーへの投資を加速させてきましたが、これまでは投資や共同研究といった「お勉強的な成果」が主体でした。一方、この1~2年で、企業の中では「投資案件をどのようにして自社の収益につなげるか」という課題意識が共有され始め、単なる投資にとどまらず、社内の仕組み・体制構築や追加の大規模予算設定など、より具体的な変革を目指す動きが増えてきています。
日本のスタートアップにとってもチャンスでもある
この動向は、スタートアップにとって、販売や連携を加速しやすくなるだけでなく、国内で難しいDeeptech系スタートアップも含め、新たなイグジットマーケットが開かれていく可能性を示しています。
日本は独立系VCに対するCVCの投資比率が世界的に高く、また、現在は上場が主流のイグジット環境も、今後M&Aが増加せざるを得ないことを考えると、この動きがその基盤を支えると考えられます。
ソフトウェア主流の時代ではアメリカや中国に追随する形が多かった日本ですが、産業特化プロダクトやIoTの実装においては、日本の製造業の市場影響力や緻密な設計力が強みとなり、世界に対して新たなバリューを提供する可能性が高いと感じています。
後編へ続く
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