大盛況! 「SusHi Tech Tokyo 2024」で見えた東京の「可能性と課題」

2024.05.21
#スタートアップニュース

5月15、16日に東京ビッグサイトで「SusHi Tech Tokyo 2024」の”GLOBAL STARTUP PROGRAM”が開催された。海外からの来訪客も含め多くの人で賑わったことのイベントで見えてきた日本の、東京の可能性と課題とは?

約4万人、予想以上の盛り上がり

間違えて人気アーティストのライブ会場にでも来てしまったのかと思った。開場から1時間近く経っているのに、エントランスには長蛇の列。スーツやジャケット姿のビジネスパーソンと思われる人が多かったことで、目指していた目的地に違いないと確信できた。

「こんなにたくさんの人が来るんだ」

それが5月15日、16日に東京ビックサイトで開催された「SusHi Tech Tokyo 2024」のスタートアッププログラムの初感想だった。行列をつぶさに観察すると、4分の1ほどが外国人、同じく4分の1ほどが20歳代の若者。まだ会場には入っていない。でも100メートル以上は続いていたその行列に並びながら、ワクワクとした表情で入場を待つ人々の顔を見たことで、いまここにある、東京のスタートアップの盛り上がりを実感した。

「SusHi Tech Tokyo」は、東京都などが主催する未来の都市モデルを発信する国際イベント。1ヶ月にわたって開催されるこのイベントの中核を担うといえるのが、430社以上のスタートアップが出店し、約4万人が来場するGLOBAL STARTUP PROGRAMだ。

会場に入ると、スタートアップ支援に力を入れている大企業や支援を募りたいスタートアップ、さらにはスタートアップ企業を誘致したい地方自治体や、自国のテクノロジーをPRする各国のブースなどがズラリと並び、トークショーなども大いに盛り上がっていた。

サイドイベントも盛況

「正直、こんなに人が集まるとは思っていませんでした。昨年の第1回から参加していますが、今年は東京都のスタートアップ戦略も発表されたとあって、参加者がかなり増えた印象があります。東京への期待みたいなものを感じます」

そう語るのは、世界的なスタートアップ発信地として渋谷の開発を進めている東急不動産 スタートアップ・メディアコンテンツ開発グループの村田直樹さん。東急不動産は、GLOBAL STARTUP PROGRAMにも渋谷の巨大模型を展示し、その未来像を見せているほか、トークショーなども開催している。来場者の多さに手応えを感じつつ、イベント外の波及効果もあったという。

「このタイミングで海外から多くの投資家やVCの方が来日するということで、渋谷を知ってもらうための独自のサイドイベントを開催しました。当日は80名以上の方に参加していただき、予想以上の大盛況となりました。こういうことができたのもSusHi Tech Tokyoがあったからこそ。一企業だけではできないことです」

村田さんとしては、このイベントを通して東京という町のプレゼンスが向上することを期待しているという。

「現在東京では、東急不動産以外にも街ぐるみのスタートアップ支援をしている企業がいくつかあります。それぞれライバル企業ということになりますが、国内で争うよりはみんなでそれぞれの特色を出しあいながら、海外から来た方々に東京がスタートアップに注力している都市だということを知ってもらえたらいいなと。こういうイベントをきっかけに東京をより魅力的にしていくための横のつながりも作っていけたらと思っています」

“言葉の壁”を超える

イベントとしては、いくつかの課題も見えた。場内の企業を取材していたあるテック系ライターが語る。

「支援してほしいスタートアップ企業、銀行や不動産会社などスタートアップを支援したい企業、投資家、VC、さらには起業を夢見る学生など、さまざまな目的を持った人がここに集まっています。でも会場が広く、出展ブースが乱立しているので、来場者がどこをどう見ていけばいいか分かりづらい。海外から来た方々は時間に限りがあるので、できるだけ効率的に見て回りたかったと思いますが、戸惑いながらウロウロしているような様子も見られました。もうひとつ、これだけ大々的なイベントをやっているにもかかわらず、新聞やテレビなどのメディアであまり取り上げられないということ。スタートアップとオールドメディアの相性の問題もあると思うのですが、これでは一部の関係者だけのイベントに終わってしまい、一般の人々の意識は変わらない。東京という町の一体感を出すためには、もっとたくさんの人に知ってもらったほうがよかったのではないでしょうか」

あるVC関係者は、相変わらずの“言葉の壁”も感じたという。

「日本は人口が減っていくけど、世界は増えていくわけですから、スタートアップをやるからにはグローバルを目指さないと大きく伸びていかない。プロ野球で活躍したいか、メジャーリーグで活躍したいか。その両者なら絶対に後者のほうが必死に努力するし、そのための戦略を考えるじゃないですか。実際国内である程度成功したのに言葉の壁に阻まれて海外でうまくいかなかったという事例をいくつも見てきました。会場で見ていた限り、外国客の扱いに苦労していたりする様子も見られました。もう日本語だけでやっていける時代じゃないと、ここに集まっている学生にも気づいてほしいし、そのための準備をしてほしいと思いました」

課題が見えるのは悪いことではない。課題があるからこそ成長するのだ。SusHi Tech Tokyoはこれからも続いていくだろうし、同様の国際イベントを企画する自治体も増えていくかもしれない。少なくとも今回、世界が日本、東京に注目しているということは証明できた。彼らの期待に応えていけば、日本はスタートアップ大国への道を歩くことができるのかもしれない。

 

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