入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.09 「AIが日本の“勝ち筋”になる」
早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんによる最新スタートアップ講座。今回のテーマはAI。生成AIや対話型AIが続々登場するなど、まさに最旬のテクノロジーといえるAIとスタートアップの相性は? AIスタートアップの“落とし穴”などについても教えていただきました。
アメリカでは数千億円規模の資金を調達
家電、AV機器、自動車はもちろん各種サービス業まで、AIの活用がどんどん広がっている。入山先生いわく「間もなくAIが当たり前にある時代になる」。
「AI自体は人工知能という意味ですから、以前から存在したテクノロジーです。それが近年注目されるようになったのはAI自体が学習能力を持つディープラーニングの技術ができてから。チャットGPTなど一般の人が簡単に使うことができる生成AIの登場も大きかったといえます。もう数年しないうちにあらゆるものにAIが搭載される時代になるでしょう。インターネットも登場したころは『どう使うか、どう使われるか』ということがニュースになりましたが、いまや誰もが当たり前に使っているじゃないですか。AIも生活の中に溶け込み、当たり前のように存在する時代になると思います」
インターネットと同じと考えると、ビジネスはもちろんライフスタイルまで一変させる可能性があるAI。現在発展途上のテクノロジーだからこそ、スタートアップにとっては大きなチャンスのあるフィールドだ。
「AIは、まさにいまスタートアップでいちばん熱い分野。世界中で数多くの企業がトップランナーになるべくシノギを削っている状況です。日本でも東大の松尾研究室などいくつものAIのスタートアップを輩出していますし、ユニコーンになりそうな企業もでてきています。ただとても変化が激しい分野で技術をどんどん更新していかなければならない。そうなると日本円で数千億円規模の資金調達を受けているアメリカなどの企業のほうが強い。日本とは二桁ちがうんです。そう考えると、日本のスタートアップがAIで世界と戦うには、よほどの差別化、社会問題の解決力が必要となります」
人手不足と暗黙知
それでも入山先生が「AIは日本の“勝ち筋”になる」と語るのには、ふたつの理由がある。
「日本にはAIを必要とする社会問題があるんです。ひとつは人手不足。AIが進化することで多くの仕事をAIが代わりにおこなうようになるでしょう。具体的にいえば、大企業の管理職的な仕事などはどんどんAIに任せたほうがいいでしょう。ホワイトカラーの仕事の大半は、AIによって駆逐される可能性が高い。仕事を奪われるという言説もありますが、それ以上に人手不足のほうが深刻です。電卓が登場したからといって、それまでソロバンを弾いていた経理の仕事がなくなったわけではありません。AIによって生み出される仕事もあるわけですから、人手不足の問題を解決するほうが優先されるべきだと思います」
“勝ち筋”になる理由のもうひとつは、日本の仕事には暗黙知の領域が多く存在するということ。
「日本の特に伝統産業や中小企業においては、技術が属人化していることが多い。仕事は背中を見て学べ的な考え方で、これまではそういった職人的な人々の脳内にだけ知見が溜め込まれていました。そういった暗黙知の領域をAIで可視化し、共有することができれば、一人前になるのにこれまで10年かかったところを2、3年に短縮できる可能性が高いわけです。それでも物理的な作業には結局人の手が必要。AIを活用してレベルアップした技術者がどんどん登場することで日本のものづくりの現場は活性化していくと思います」
人手不足と暗黙知。このふたつの問題を解決するAIの開発が日本の勝ち筋につながる。だが、スタートアップがAIに取り組むときに気をつけなければならない“落とし穴”もあるという。
「AIそのものは単なる道具なので、そこに価値はない。そうすると単にAIの開発を進めても、だれかからの依頼がないとビジネスにつながらないわけです。いま多くのAIスタートアップが陥っているのはこの状態です。AIを開発したのはいいけど、結局クライアントの要望に応えるだけの下請けになってしまう。そうすると、どうしても大きな成長は望めなくなります。だからAIに取り組むときは、まず自分なりの課題を見つけ、そのためのAIを開発していく。まったく新しいビジネスを作る覚悟で取り組まないと、大きな流れのなかに飲み込まれてしまうことになります」
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