入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.08 「失敗ではなくナイスチャレンジと考える」
早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんによる最新スタートアップ講座。夢を追いかけては見たけれど、現実は厳しかった……。スタートアップの90%以上が失敗に終わるという現実に、夢をあきらめる人も多いのでは? 第8回は、スタートアップの「正しい失敗」の仕方について講義してもらいました
スタートアップの90%以上が“失敗”
目指すはザッカーバーグかイーロン・マスクか。大きな夢を抱いて起業したのはいいけれど、事業はなかなか浮上せず、用意した資金も底をついた……。スタートアップの世界で注目を集めるのは、華々しい成功をおさめた起業家ばかり。でもその裏にいるのは、膨大な数の夢半ばで去っていくルーザーたち。
「スタートアップに夢を与えるプログラムでこんなことを言うべきではないかもしれないけど(笑)、メディアに登場するようなスタートアップは、ほんのごく一部。ほとんどのスタートアップ企業、一説には90%以上が起業から数年でつぶれてしまいます。3〜4年続けているというだけで、それなりに見どころのある事業だといえます。でもそこから浮上するのも本当に大変。資金を食いつぶし、起業家自身は報酬を受け取らず、少ない稼ぎのなかからオフィスの家賃と人件費を賄っている。こういうスタートアップも本当に多いんです」
なかなか浮上しないスタートアップには共通点があるという。
「起業家が当初の自分の理想やアイデアに固執してしまうと、うまくいくものもいかなくなってしまいます。スタートアップにはピボットがつきもの。リサーチ、実証実験まではうまくいったけど、実際にサービスを開始してみるとまったく客がいないというのは、よくある話です。そのときにその過程からなにを学び、次にどうつなげていくか。もしそこに方向性は違うけど、ビジネスの“芽”を見つけられるならば、迷わずにピボットしてそれを追求してみる。それを繰り返して小さな成功をおさめているうちに、新たなアイデアが生まれることもあるし、人脈も増えていき、ビジネスの感覚も磨かれていく。理想を諦めろということではなく、理想の追求はビジネスとして成立してからでもいいじゃないですか。実際、ピボットを繰り返しているうちに大きな成長を遂げた企業はたくさんあります。いい事例がソフトバンクです。最初はソフトウェアを紹介する出版事業から始まり、そこから『YAHOO! JAPAN』の設立、携帯電話事業とつながり、現在の投資事業へと変わっていきました。規模が大きすぎると思うかもしれませんが、これも間違いなくピボット。この過程の中には、必ずしも成功とはいえない事業もたくさんありました。でも孫正義さんが一度でも躊躇していたら現在のソフトバンクはなかったと思います」
倒産しても終わりではない
ピボットを繰り返しても、うまくいかない場合は?
「そうなったら、潔く諦める(笑)。会社が倒産したら身ぐるみはがされる、破産したら人生終わりみたいに思っている人が多いかもしれないけど、日本は制度的にそんなに厳しくないのでそこまでのことはないです。会社を倒産して、自己破産したけど、二、三ヶ月後には新しい事業をはじめたなんて話もよく聞きますから。僕はいつも言っていますけど、スタートアップにおいて失敗しても“ナイスチャレンジ”。会社の立ち上げから倒産までの経験を積むなんてなかなかできることじゃないんですから、必ず次のキャリアにいきる。大企業ではカムバック採用のような形も増えてきていますし、日本もスタートアップの失敗に寛容な社会に変化してきている。数ヶ月とはいわないけど、数年たって機が熟したと思ったら、また挑戦すればいい。人生だって何度もピボットしていいんです。諦めずにチャレンジし続ければ、いずれは成功のチャンスもあるはずです」
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