入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.07「資金調達ってどうすればいいですか?」

日本の起爆剤になるようなスタートアップの登場を誰もが待ち焦がれている。そんな人間が、企業が本当に現れるのか? 日本、世界のスタートアップ界隈ではいったい何が起きているのか? 早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんにスタートアップの最新事情を語ってもらった。
お金は簡単にもらえないから大丈夫(笑)
アイデアがある。やる気もある。じゃあ、起業してみようとなったとき、最初の壁になるのが資金調達ではないだろうか。スタートアップを立ち上げ、経営していくための最初の数百万、数千万。目指す事業内容によっては億を超える資金が必要になる。入山教授、スタートアップの資金調達はどうのように行えばいいのですか?
「最近はそう難しいことではなくなっていますよ。少し調べれば、投資家が集まるところが見つかりますし、大手企業や自治体もスタートアップへの投資を積極的に行っています。そういうところをどんどん訪ねていって、自分のアイデア、ビジョンを語っていけばいいんです」
小市民的な考え方かもしれないが、いきなり赤の他人から多額の金を受け取ることに、少し怖さも感じるのだが……。
「大丈夫です。そんなに簡単にお金もらえないから大丈夫(笑)。投資家という人たちは、1日何十件もミーティングやっているんですよ。そのほとんど初めての起業する人たちで、『こういうことやりたいから出資してください』『すごいこと実現するので1億円ください』って。それを毎日繰り返すのが彼らの仕事なんです。そん中でこれはと思った人にお金を出すわけですが、その人数はせいぜい月に1人とかなわけです。要するに、ほとんどの人は断られます。だから、お金を出してもらうのは怖いなんてまったく考えなくていいんです。まず出してもらえませんから(笑)」
金を出してもらえないと、起業できない。でも先生曰く、投資家を訪ねてもそのほとんどが断られる。ではどうすればいいのだろう?
「金を出してもらえるように、相手が出したくなるように、自分のアイデアや自分自身をブラッシュアップしていくんです。投資する側はリスクを負いますから、厳しく相手を見ています。そのアイデアは事業化できるか、その事業は将来性があるか、目の前にいる人間は信用できるか、スタートアップの荒波に耐えられるか、信頼できる仲間を見つけられるか……。短い時間に彼らはいろんなことをチェックしています。出資してもらえるのは、そういった厳しい目を通り抜けた人たちだけなのです。2度や3度、出資を断られたからといって起業をあきらめるようではそもそも向いていない。断られた面談から学んで、どんどんブラッシュアップしていくくらいの気持ちがないと、金は集まらないんですよ」
大きく育てたいなら融資ではなく出資
出資先をまわるならハードルが高いところから。そのぶん、得られる出資も大きいからだ。
「いちばんハードルが高いのが独立系のVC。スターアップを見る目は厳しいですが、成功に導くノウハウも持っています。そこが難しいなら大企業がやっているCVC。この場合、大企業がやっている事業とのシナジーが求められることが多く、そこがネックになるパターンもあります。最後は政府系、自治体系ですね。ハードルは前者ほど高くありませんが、出せる金額には限度があります」
最近は、スタートアップへの“融資”を行っている銀行も増えてきた。こちらは出資ではなく、融資。いわば借金を背負ってのスタートとなるのだが……。
「最初から返せる目処があるようなビジネスだったら、それでいいと思います。でもそこそこの売上ではなく、大きなビジネスに育てようと思うのなら、やはり融資ではなく出資を求めるべき。ビジネスをやっていくうえで、常に返済の不安を抱えているのは得策ではない。将来性のある事業モデルであれば、出資してくれるところはたくさんあります。気をつけなければならないのは、VCなのに個人保証を求めるところ。僕から言わせれば、それは本当のVCではない。ちゃんとしたVCなら、もし失敗しても出した金を個人で返せなんて絶対に言わないですから。そういうところがあったら、すぐに相談をやめたほうがいいです」
結局は、金のことを心配するより自分のアイデアを磨くのがいちばんということ。
「そうなんです。僕が見てきた限り、有望なアイデアにはすぐに出資がつく。逆に金の心配ばかりしているようなスタートアップは、その時点でビジネスに疑問があるということです。アイデアと人間性さえしっかりしていれば、今の時代、誰かが見つけてくれて、金を出してくれるはずです」
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