入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」特別編 「FTS INTREPRENEURS AWARD 2024」大企業でがんばるイントレプレナーを讃えることの意義

8月26日に開催された「FTS INTREPRENEURS AWARD 2024」の授賞式。今回、アワードの審査員として受賞者の選定を行った早稲田大学大学院文学経営管理研究科教授であり、経営学者の入山章栄さんに、イントレプレナーに賞を与えることの意義や、この賞が今後の日本に与えるインパクトについて語ってもらった。
会社員であることを最大限に利用する
「FTS INTREPRENEURS AWARD 2024」は、企業に籍を置きつつ、新規事業や社内起業でがんばる若手イントレプレナーを応援する目的で設立された。第1回の受賞者は、株式会社coordimateの飯野健太郎さん(NTTドコモ)、「Rice Phoneプロジェクト」に取り組む住友商事株式会社 伊藤直也さん、そして製造業の設備保全のサービスを提供する株式会社KAMAMESHIの小林俊さん(日本製鉄)の3名。アワードの審査員をつとめた入山教授は、まったく業種の異なる3人にひとつの共通点があり、それが選考の大きなポイントになったと語る。
「3人それぞれが独創的なアイデアとそれを実現するための情熱を持っているのはもちろんですが、僕が面白いなと思ったのは、彼らがイントレプレナーならではの知恵というか、企業に所属しているからこそできることを追求している点です。それは、大企業の『金と看板』(笑)。こういってしまうと身も蓋もないのですが、このふたつは独立系のアントレプレナーにはない武器。彼らが所属する企業の信用があれば、なかなか会えない人にも会えるでしょう。アントレプレナーは起業当初はお金の問題で苦しむものですが、彼らにはそれもない。数年がかかりでじっくり腰を据えて、やりたいことと向き合うことができる。なかには黒字化するのにまだしばらく時間がかかりそうな事業もあります。こういう事業はアントレプレナーならスタートすることすら難しい。今回の3名は、それぞれ会社員であることの強みを最大限に活用しながら事業を立ち上げ、率いている。そこが面白いと思いました」
NTTドコモ、住友商事、日本製鉄。3人の受賞者が所属するのは日本を代表するような大企業ばかり。入山教授は、彼らを通して日本企業の変化を感じたという。
「詳しく聞くと3社のイントレプレナーに対するスタンスは異なるのですが、度量の大きさみたいなものは感じました。何度ピボットしても、なかなか黒字にならなくても応援してくれると。僕は以前から言っているんですが、社内起業で金と責任を背負うことで会社員は大きく成長するんです。こういうイントレプレナーに寛容な大企業が増えていけば、日本の経済はどんどん元気になっていくと思います」
イントレプレナーを可視化する
入山教授は「FTS INTREPRENEURS AWARD」がイントレプレナーの存在を可視化し、社会と繋ぐ役割を担っていくことに期待しているという。
「スタートアップに必要なのは、金と仲間と情報。イントレプレナーの弱点は、仲間や情報に出あえるチャンスが少ないということ。一般的なアントレプレナーは、まず運転資金を得なければならないので、とにかくいろんなコンテストやイベントに参加して、自分を応援してくれる人を探します。そこで金だけでなく、仲間と出あったり、情報を得たりするわけです。でもイントレプレナーの場合、その存在は社内や関係者しか知らないことが多い。なにしろお金を集める必要がないし、人材も情報も社内で完結する。逆に言えば、彼らはすごく閉ざされたところから世界を見ているし、世界からも彼らの姿は見えないわけです。今回、アワードを受賞したことでイントレプレナーという存在を可視化することができます。彼らに注目が集まれば、彼らのもとにいろいろな人が集まることになるでしょうし、パーティに行けば新たな出会いがあるかもしれない。社内だけでなく、社会全体からいろいろな情報を得るきっかけにもなる。この賞は日本のイントレプレナーのあり方を変える可能性があると思っています。すごく意義のある賞だと思うので、5年10年と長く続けてほしいですし、企業につとめる若い人たちが憧れるような賞に育ってほしいと思います」
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