入山章栄教授の「最新スタートアップ講座」vol.02 「“不確実”だからこそチャンスがある」

日本の起爆剤になるようなスタートアップの登場を誰もが待ち焦がれている。そんな人間が、企業が本当に現れるのか? 日本、世界のスタートアップ界隈ではいったい何が起きているのか? 早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授であり、長年日本のスタートアップについての研究を続けてきた経営学者の入山章栄さんにスタートアップの最新事情を語ってもらった。
オジさんのマインドセットを変える
どんなに優れた技術や高い理想を持っていても、先立つものがなければビジネスは成り立たない。グローバルで通用する日本のスタートアップが生まれない理由は、投資するベンチャーキャピタル(VC)にも理由があると入山教授は指摘する。
「VCに多いのはファイナンス系の人か、自分で起業したけど、いまはVC側にいますという人。それはそれで素晴らしいんですけど、日本は技術立国なので、これからはもっとテック側の人が出てきてほしいなと思っています。テクノロジーの深い部分までしっかり理解したうえで投資できる人が増えていけば、より活性化するのではないでしょうか。もうひとつ日本では、大企業が主体となったCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が多いというのも特徴です。大企業の一部門として投資を行うのでリスクをとらない傾向が大きいですし、『投資してあげたんだから毎週レポートを提出するように』なんてことを言うところもある。スタートアップなんて死ぬほど忙しいんだから、大企業のオジさんたちのためのレポートなんて毎週書いていられないんですよ(笑)」
日本においてはスタートアップもそれを支えるベンチャーキャピタルも未成熟。でもあまり悲観的に考えることはないと入山教授は語る。
「アメリカだってここまでになるのってすごい時間かかっている。日本はスタートアップに本格的に取り組み始めてせいぜい10数年。だから差がついていて当然なんです。アメリカ以外の国で比較すると、ヨーロッパもそれから東南アジアもまだまだ。そういう意味では日本も焦る必要はないし、これからまだまだ伸びると思っています。大切なのは、継続です。前回、個人のマインドセットとして失敗を恐れないことが大切だと述べましたが、これは支援する側の企業も同じです。スタートアップを育てるのは失敗の積み重ねだと考えて、1度や2度の失敗を気にしないこと。10年間赤字を出し続けても、11年目にその数倍の利益を生み出す。それがスタートアップなのです。失敗しても継続し続ける。その先にしか成功はないわけですから」
“ゆでガエル”からの脱却
スタートアップを取り巻く状況は徐々に変わりつつあるという。
「コロナ禍はスタートアップにとって大きな転換点になったと思います。日本人はもともと危機感が薄かった。長い間、いわゆる“ゆでガエル”の状態だったわけです。でもコロナ禍という世界的な危機が訪れたことで、現在が不確実性の時代だということを理解し、ようやく危機感を持つようになったわけです。しかも従来の常識が通用しない、正解のない時代を乗り切る手助けとなったのがzoomなどのデジタルテクノロジーだった。こういった変化を受け入れることで多くの日本人のマインドセットが変わったと思っています。実際、コロナ以降大企業のトップのマインドが変化し、スタートアップに関心、理解を示す方も増えています。ピンチはチャンス。若者たちはそのことにとっくに気がついている。そしてそれを形にできるのがスタートアップなのです」
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