本田圭佑、藤田晋が語り合った「いま僕らが25歳だったら」

スタートアップカンファレンス「CREATE」開催
“世界のホンダ”は、いまの日本に危機感を持っているという。「ファウンダーとしての取り組み方」「チーム作りでのリーダーのとるべき行動」などなど……。3月に渋谷で開催されたスタートアップカンファレンス「CREATE」には、本田氏とともにサイバーエージェントの藤田社長も登壇。現在の日本、現在のスタータアップをめぐり、熱い本音を語りあった。
ユニコーンが生まれる街
日本の、世界の未来は、渋谷から生まれるのかもしれない。3月18日、渋谷・ヒカリエホールで開催されたスタートアップカンファレンス「CREATE」には、国内外の起業家、投資家、アーティスト、アスリートなど約400名が集結。それぞれの思いがぶつかりあい、新しい絆が生まれる場となった。
「渋谷は日本中の若者が集まり、カルチャーを作ってきた街。今はインターネットで世界がつながり、スタートアップの人々が集まって様々なものをクリエイトし、生み出している。これが渋谷の大きなエネルギー。これからも様々な人が交わって調和する街でありたいし、海外スタートアップへのビザ発給、住宅の供給など、ワンストップでサポートしてスタートアップ業界を応援していきたい」
まずは積極的にスタートアップ支援を行っている渋谷区の長谷部健区長。東急グループによる駅周辺の再開発が進み、街の姿も人の流れも大きく変わりつつある渋谷。その推進力となっているのが、世界中から集まる若い起業家たちだ。官民一体となったムーブメントは、着実に実を結びつつあり、スタートアップの中心地、ユニコーンが生まれる街として世界から注目を集めている。
今やるなら「バイアウト」
続いて登壇したのは、サッカー選手として世界で活躍、その後投資家としてビジネス界でも大きな存在感を示している本田圭祐氏と、渋谷を代表する起業家であるサイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏。二人は「もし自分が今25歳だったら、何をするか?」をテーマに熱く語り合った。
「25歳というとサッカーも忙しい時期だと思うので、現実的にはプロのキャピタリストの人と話して、一緒に良い案件に色々と投資をしたのではないか。あとはバイアウト。事業承継問題は日本でも色々と言われている中で、儲かってはいるけれど創業者が年をとっていて、PEファンドが口説こうとしても話を聞いてもらえないような企業も結構あると思う。そういう企業を買いに行ってみたい。今ならばそれをやりたい」(本田氏)
「自分が25歳ならば、やっぱりバイアウトかなと思う。0から始めて何かを形にして、それを売却して、次に、というのが今の時代のひとつの成功パターンだと思う。自分は24歳で起業し、その頃、インターネットが伸びて、ネットバブルがはじまったところ。自分が起業するタイミングとネットバブルが始まるタイミングがちょうどピタッと同じタイミングで、ついていた。でもいま起業すると考えると、本当に領域がない。例えばDX、AIはド本命な産業だが、大企業が参画するエリアであり、なかなかスタートアップが食い込めない。となると、今は伸びている産業が少ないので、伸びている地域に行った方がいい。だから、最初に考えるのは海外で起業する、という選択かもしれない。あとは日本が一番素晴らしいものを作れる分野、アニメ、音楽などはあるかもしれない。他にも例えば世界一のリゾートホテル、世界一のワインなどを作れたりすれば、海外からも買いに来てくれるわけで、そういう領域を探すか」(藤田氏)
「無理」を「できる」に変えるリーダーが必要
実はこのカンファレンスは、本田氏が共同創業者であるベンチャーキャピタル「X& Circle I LP」と東急不動産による共同開催だ。場所の提供、成長支援などを通じて、広域渋谷圏を国内外のキープレイヤーが集まる日本最大級のスタートアップコミュニティにしていく。渋谷で始まる、世界へつながる、グローバルに通用するスタートアップを生み出す聖地にしていきたい。そんな共通の想いで開催が決まった。本田氏は「僕らのミッションは、グローバルに日本の企業、スタートアップを連れていくこと」だと語る。
「もともとビジネスの世界に入ったのが貧困を目の当たりにして、世界の不平等に疑問をもったのがきっかけ。機会の不平等性みたいなものについて、すごく感情的に、パッションがある。サッカーの大会も誰もが子供のころ平等に得られるべきだと思うし、そういう思いで4V4をやっている。まさに世界を見ると見たことのないような人が、見たことのない環境で生活しているという事実がある。ビジネスに足を踏み入れた時のそういう気持ちを忘れたくない。サッカー文脈で言えば、子どもに夢を与える、そういう使命感をもっている」(本田氏)
「自分は25歳の時、何の知名度もなかったので、とにかく走りながら考えた。1年ごとに成長を感じていたので、それを前借りして『できます』と言っていたし、適正はやればついてくるという感じだった。24歳で会社を作り、26歳で上場すると言っていた。それまで最年少の上場がダントツで31歳、光通信の重田(康光)さん。その頃、総額10兆円を目指すとか言っていた。そういうことを言うと周りがついてくる。まわりもみんなそんな感じに気がついていて、堀江さんは『宇宙一を目指す』と(笑)。結局成功した人はそういう人」(藤田氏)
昨年までサッカーのカンボジア代表でGMをつとめ、一からの組織づくりを経験した本田氏は、自らの経験も踏まえ、成長を目指す組織における“ビッグマウス”の必要性を語った。
「チーム作りで大事な考え方は、出来ないようなことを平然と言い続けるリーダーがいて、まわりをインスパイアすること。それが勝つ組織で普通に行われている一番大事なことだと思う。リーダーが小さいことで満足してしまったり、立ち止まったりすると、いつの間にか組織は衰退に向かっていく。成功する組織で一番大事なのは、出来ないことを当たり前のように口にして、平常化させていく人間がいること。するといつの間にか、『無理』といっていた人も、『できるかも』というような雰囲気が生まれてくる。その空気感をいかに作るか大切で、上を目指す組織には絶対に必要なんです」(本田氏)
明日が今日よりもよくなるために
本田氏も藤田氏も本音をズバズバと語り、聞いているだけで体の芯が熱くなるよう。続いて登壇した自由民主党 デジタル社会推進本部事務総長の小林史明衆議院議員は、スタートアップへの投資を5年で10倍にする「スタートアップ育成5か年計画」の提言を発表した。具体的には、
・ストックオプション制度改革
・再投資に対する税制優遇
・投資家ビザの緩和
・10兆円規模のファンドの創設
この提言には本田氏も「この政策は日本でスタートアップをやる理由になる」と太鼓判を押した。会場が多いに盛り上がりを見せるなか、最後に登場したのは、岸田文雄内閣総理大臣。
「日本かつては技術立国と言われた。ソニーもホンダも多くのテックカンパニーが最初はスタートアップだった。そして世界へ羽ばたいていった。日本には今も優れた技術で社会課題を解決する多くの起業家はいる。バブル30年経て、日本は変わりつつある。この流れを確実にするために次世代を担うスタートアップの活躍が不可欠である。明日が今日よりも確実によくなる。いい意味での危機感と挑戦につながるきっかけになる事を祈っている。私も政策でそれを支えていければと思う」
“危機感”と“挑戦”。この2つの言葉は、本田氏も繰り返し発していた。「このままじゃいけない」「だから動き出す」。この日をきっかけに、壇上で語られた熱い言葉をきっかけに、若者が動き出し、日本が、世界が変わっていくのかもしれない。
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