「CEATEC2025」2025年のイノベーションの動向を探る
                デジタルイノベーションの総合展「CEATEC2025」が、2025年10月14~17日幕張メッセで開催された。26年目を迎える今年はテーマ「Innovation for All」を掲げ、イノベーションの社会実装を加速させる契機を創出。約810社・団体の出展者数の中、会期4日間で約10万人が来場した。
多くの大企業からスタートアップ、大学・研究機関、そして支援者などが集まる中で、本記事は、「CEATEC AWARD 2025 イノベーション部門 受賞企業」と、大企業発新規事業として注目を集めた「CEATEC 2025事業会社発 新規事業/スピンアウト ピッチコンテスト」の一部をピックアップ。本イベントを通して、本年のイノベーションの動向を探る。
大企業の新技術が光るCEATEC AWARD 2025 イノベーション部門
リンナイ株式会社

リンナイは、「浴槽内心電計測モジュール」によって、浴室という身近な生活空間から健康という新しい価値を生み出す挑戦が高く評価され、CEATEC AWARD 2025 イノベーション部門賞を受賞。

このモジュールは、入浴者の心臓活動に伴う微弱な電気信号を湯水を介して非接触で計測できるという革新的なデバイスだ。
入浴中の心拍データから深部体温や自律神経、循環機能といった身体状態を推定し、入浴という日常行為を「安らぎの時間」から「予防ヘルスケアとライフスタイル改善の場」へと進化させることを目指している。
株式会社日立製作所

日立製作所は、「次世代AIエージェント『Frontline Coordinator – Naivy(ナイビー)』」で、少子高齢化や熟練作業者の減少といった社会的課題に対し、現場の心理的負担を軽減しながら、遠隔から複数現場を管理できる新たな働き方を可能にする点が高く評価され、CEATEC AWARD 2025 イノベーション部門賞を受賞。

「Naivy」は、製造・点検・保守といった現場作業を支援するために開発されたAIエージェントで、メタバース上に作業現場を再現し、図面や映像、音声、作業者の動作など、さまざまな情報をデジタルツインとして統合。熟練作業者のナレッジを解析し、非熟練者の作業をリアルタイムで支援・ナビゲートし、人とAIが協働する次世代の現場革新として注目を集めている。
砂漠を舗装し、地図を捨て、花を光らせる——大企業発スピンアウトが魅せた、ディープテックの熱狂

大企業の研究所や事業部から生まれたスピンアウトや新規事業が集うピッチコンテスト「事業会社発 新規事業/スピンアウト ピッチコンテスト」が、10月17日にネクストジェネレーションパーク内ステージで開催された。VRスポーツ、移動ロボット、バイオ、発光花など、「ディープテック × 社会実装」を主とした8チームが次世代を切り拓くテクノロジーとビジョンをぶつけ合い、会場は熱気に包まれた。
審査には業界関係者などを含む来場者が参加。テクノロジーの可能性と社会的インパクトを軸に、各社の挑戦が評価された。
最優秀賞:本田技術研究所発 PathAhead「ライジングサンド」
— 砂漠の砂が、アフリカの未来を舗装する。
アフリカの深刻な道路問題に挑むのは、本田技術研究所からスピンオフしたPathAhead。「ライジングサンド」は、砂漠の砂を原料とする新しい舗装材だ。従来の天然砂利では道路の寿命が1〜5年と短く、維持費も高かった。
PathAheadは独自の造粒技術で20年の耐久性と60%のコスト削減を実現。ケニア、南アフリカ、タンザニアを主要ターゲットに、道路・コンクリート・路盤材への活用を進めている。ケニア都市道路局との実証実験に向けた覚書も締結済み。
砂から道を生み出すこの技術は、インフラを変え、移動の自由を取り戻すことを目指す。
ディープテック賞:ローム発「NoMaDbot(ノーマッドボット)」
— 地図はいらない。ロボットが「即興」で動く時代へ。
ロームが挑むのは、“地図に頼らない自律移動”。「NoMaDbot」は、自己位置推定や地図作成を必要とする従来技術の常識を覆す。
方位推定とエコーロケーション(反響定位)を組み合わせ、地図なしで自律走行を実現。複雑で高コストな制御を排し、現場導入のスピードとコスト効率を劇的に向上させる。
ローム内の新規事業から生まれたこの技術は、ロボット駆動の“ハードウェア革命”を起こそうとしている。
埋もれている技術が光る賞:DIC発「RADilys(ラディリス)」
— 花は、二度咲く。光で咲かせる新しいアート体験。
DICが手がける「RADilys(ラディリス)」は、特殊染色液とブラックライトを使い、生花やドライフラワーを暗所で鮮やかに発光させる新しい観賞体験を生み出す。
既存の花流通網を活かし、染色パートナーによる地域展開も可能。ブライダル(光るバージンロード)やナイトプール、アート展示、企業イベントなど、多様なシーンでの演出が想定されている。
「花は2度咲く」というブランドストーリーの通り、科学と感性が交わる瞬間を創出するプロジェクトだ。
登壇者一覧:未来を切り拓く革新者たち
※登壇順
荒智子氏「V-BALLER」/NTTデータ発/AbZero株式会社 代表取締役
伊賀将之氏「ライジングサンド」/本田技術研究所発/PathAhead株式会社 代表取締役
中村瞳氏「30min.」/三菱地所発 30min.事業責任者
伊藤悠一氏「CodeLedge」/大日本印刷発/DigKnow株式会社 代表取締役
矢熊宏司氏「NoMaDbot」/ローム発 グループリーダー
秋田晋吾氏「SOPHiART」/京都大学発/SOPHiART株式会社 代表取締役
東條健太氏「RADilys(ラディリス)」/DIC発
奧山健太氏・太田光彦氏(リベリア代表取締役)「Rælclear」×リベリア/ジャパンディスプレイ発 R&D
イベント開催概要
イベント :事業会社発 新規事業/スピンアウト ピッチコンテスト
日  時 :2025年10月17日(金)15:30~17:00 
場  所 :幕張メッセ ネクストジェネレーションパーク展示ホール6 NGPステージ
企業の中で長く温められてきた技術が、いま事業化し、自らの意思で歩み出している。
今回のCEATEC2025は昨今見失いつつあった “日本のものづくりの矜持”が再び盛り上がる可能性を感じる内容だった。
技術者の情熱が社会課題と結びつき、現場で動き、世の中に問いを投げかける。
新サービスが描くのは、単なる技術革新ではなく、日本の未来の設計図なのかもしれない。
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